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01.2012

平成23年度  環境造形演習 (大学院1年次 課題)

建築物や自然環境の中で彫刻をより効果的に存在させるためには、彫刻とそれをとりまく環境との相互関係に配慮が必要となってくる。また現在、環境そのものを高度に造形化出来る人材が求められている。この分野に関しては、これまで建築家、デザイナー彫刻家などから様々なアプローチがなされてきたが、未熟生の部分が多い。ランドスケープ等も含め環境造形全般について意識を高め、演習を通して伝統的なものから現代のものまでを学ぶ。
担当教員:林 武史(非常勤講師、東京芸術大学教授)
               前川義春(彫刻専攻・教授)
               伊東敏光(彫刻専攻・教授)
               C・ウォーゼン(彫刻専攻・准教授)
               秋山隆(彫刻専攻・講師)
平成23年度テーマ「臨場と干渉、そして連鎖
彫刻が存材するには多くの事項が必要である。その中で周囲の環境とどのように折り合いをつけるかが重要なポイントとなる臨場、また、その場と事物に何らかの影響を与える干渉。そして彫刻に強く望まれる連鎖反応などがある。これらの出来事を内と外の差異を主なる手がかりとし、彫刻自体の存在感とは、現代の多様化した表現において何が強い彫刻なのかを再考し、新たな独自の彫刻の言葉を生み出すことを試みる。
内容
(前半)
1日、導入、課題説明(室内と野外空間の提示)
2日、作品プランとマケットの作成
3日、プラン、制作方法のプレゼンテーション
○作品制作(後半授業までの約5ヶ月間で制作を進める)
(後半)
4日、各自選んだ空間に作品設置、プレゼンテーション、鑑賞
5日、林教授の指定した空間に作品を移動設置、プレゼンテーション、鑑賞
6日、講評、指導
以下 学生の展示作品
市田みなみ
「つなぐもの。」
生命をつなぎ続ける種をモチーフとし、作品を通じて生まれうる人と作品との繋がり、または人と人との繋がりが生れることを目的として制作した。天井がすっと空に抜ける無機質な空間なら、さし込む光が木がもつ独特な質感を引き出し、作品がもつ表情の変化を楽しむことができるだろうと考えた。
 

2回目の展示は、自分のイメージに反した草木の生える空間だったこともあり、自分の抱いていた作品のイメージを壊し、空間が導く作品の新たな展開を求めようとした。

田中圭子
「陰陽礼賛3」
壁を触覚的な形態の布で覆い、見る者の全身を包み、身体を感じさせる空間を作りたかった。突起物がそこから何本か出ることにより、触覚的かつセクシャルな印象を持つ形態にすることを試みた。また天窓から光がさすこの場所で、白と黒の二色を使うことで、光と影の印象も強め、神秘的な美しさが出せたらと考えた。

2回目は前回よりも狭い空間で展示することとなり、そのまま作品を持ち込むと小さな布の固まりが余ってしまった。そこで、変化したことの象徴的な形として、その余り布のみを展示した。

西尾愛
「浸入」
コンクリートの壁や幾何学的な形が多く、無機質な印象がある大学の風景を利用して行なわれるこの演習に対し、有機的な素材「紙」を用い、さらに、有機的なモチーフとしての「ハダカ」のもつユーモアを利用することで冷たい場の温度調節ができないかと考えた。

展示替えで指定された場は、最初の設置場所の要素が螺旋階段を中心に構成された「円・曲面」だとすればそれとは性質の違う「縦・横」要素の強い場だと感じたのでその空間を強調し、かつ、有機的な形で緩める事も出来るのではと思い、作品を踊り場の角に配置した。

山川真紀
「軍手模様シリーズ」
ポップでカラフル、そして巨大で愉快な作品が作りたいという動機が念頭にあり、「滑り止めゴム付き軍手」という素材に行きついた。素材を吟味する内「縫い合わせることで面白い模様ができあがるのではないか」と思い、制作・展示し「軍手」のもつ特徴を学んだ。
「地上の穴」

「空中の網」

展示替えでは、この作品が環境に対し異質な存在でありうる方法、展示することによる環境の変化、また作品の形・素材・存在自体への可能性を探求した。
「梯子」

「イサムジャック」