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12.2010

平成22年度  環境造形演習 (大学院1年次 課題)

建築物や自然環境の中で彫刻をより効果的に存在させるためには、彫刻とそれをとりまく環境との相互関係に配慮が必要となってくる。また現在、環境そのものを高度に造形化出来る人材が求められている。この分野に関しては、これまで建築家、デザイナー彫刻家などから様々なアプローチがなされてきたが、未熟生の部分が多い。ランドスケープ等も含め環境造形全般について意識を高め、演習を通して伝統的なものから現代のものまでを学ぶ。
担当教員:北郷悟(非常勤講師、東京芸術大学教授)
               前川義春(彫刻専攻・教授)
               伊東敏光(彫刻専攻・教授)
               C・ウォーゼン(彫刻専攻・准教授)
               秋山隆(彫刻専攻・講師)
平成22年度テーマ「私の視点からー場—環境—表現としての構造ー彫刻」
主旨
自然と人間を対象とした環境をテーマとし、空間とモノとの「関係と構造」を考え、表現としての内的な領域を拡大する。 
目的
あらゆる領域やジャンルを超え、私という個人の視点(オリジナルな)で感じられる構造を探り、自己の表現領域の拡大を図ることで、彫刻家としての哲学的視点を高める。
方法
目に見えるもの:
魅力的な空間に対し、またはそうではない空間に対し周囲の状況を分析し、その関係性について構造化することでリアリティある彫刻にする。
目に見えないもの:
自己の、または他人の存在と周囲の事やモノ、過去や未来、その環境について状況を分析し、その関係性について構造化することでリアリティある彫刻にする。
以下 抜粋した展示作品
工藤理瑛
「Ready for birth」 
出産を控えた妊婦の期待や不安の感情を表現しようと制作しました。2mという、見上げる大きさにすることで、不安な表情を一層近くに感じるようにしています。
また、有機的な形を持つこの作品を、高い壁に囲まれた薄暗い空間におくことによって、作品独特の世界に変えることができると考えました。水気の多いこの場所の鮮やかな緑は、銅や鉄といった金属質の色合いとよく合い、お互いに引き立てあってもいます。
原案



展示作品

島本曜都子
環境を作品の一部として造形化する事を試みた。吹き抜けの円の形態や全体から差し込
む光、高さなどを活かし、布を使う事によりダイナミックな空間利用と光りや色味、布の
重なりによるグラデーションの効果も期待した。
また作品の外、内、上から中を覗き込んだ時と、3つの環境の違いによる視点からなるそ
れぞれの形態もこの作品の狙いだ。それにより作品自体を幾つかの環境として体感しなが
ら鑑賞できればと考えた。
原案


展示作品


久保寛子
「けものみち」
自然の中で突然動物を目にする時、空間がぴんと張り詰めた緊張感に充たされるのを感じる。そしてその瞬間心には静かな畏敬の念が生まれる。この作品では、野生動物が人に与える独特の緊張感や強い存在感を空間に表現する事を試みた。また、“見慣れた景観”と“未知の世界”“人工的な空間”と“野生動物”といった対照的な要素を作品に取り入れることで、非現実的な空間が演出できるのではないかと考えた。
原案


展示作品